■日本ロケット協会稲谷会長の連載(ロケットニュースNO.563より)

 
日本ロケット協会 会長 稲谷 芳文 


宇宙のまがり角(1)
 
 前号でご挨拶したとおり,このたび会長をお引き受けしました.よろしくお願いします.
長友先生が会長の時に「会長席」というコラムをニュースに連載していました(ロケットニュース1996-5〜1998-4).
会長になって周りを見ると,と言う風景を描くのだ,と言う触れ込みでしたが,ロケット協会の創成期からのことや,その頃からの人のことなども書いてあって,いろいろ面白いコラムでした.
さて私も何かしないと行けないとは思いつつ,若輩モノには創成期のことなど分かりませんし,会長の才覚も先達と違ってそれほど周りが見えるほど高くもなく,またその能力もありませんが,コラムのまねごとだけすることにします.
内容はいろいろ考えましたが,宇宙にはもちろん道もないし,まがり角もありません.
中身はこれからですが,まあ「宇宙のまがり角」と言うより,「宇宙の"仕事の"まがり角」と言うくらいのつもりです.
宇宙開発のまがり角,というとたいそうに聞こえるので止めました.

 ロケット協会50周年はもう5年以上前です.前後して,スプートニク50年,エクスプローラ50年,ガガーリン50年,ペンシル50年・・・などはしばらく前のことで,今年は内之浦50年です.
また今年は糸川先生生誕100年でもあるのだそうです.要するに宇宙の仕事が世の中で始まってから50年以上の時間が経ったと言うことで,その間の出来事は,もちろん人工衛星から始まって有人飛行,月の着陸,スペースシャトル,宇宙ステーション・・・とまあまあ発展,と言うことではあります.

 でも,この50年のどの辺りからでしょうか,80年代から90年代にかけてのシャトルの運航開始,ISSの建設というあたりからそれまでの右肩上がりで順調にという世界ではない何らかの変化,あるいはある種のターニングポイントにさしかかったのでしょうか?
20世紀から21世紀へという転換のタイミングでもあります.

 ロケットのことで言うと,我々が学生の時はちょうどシャトルが運航を始め,よし,次はもっといいもの作ろう,と言う雰囲気の世の中でした.今はとてもそう言う状態とは違います.
この差は何でしょうか?
この間,冷戦の終わり,世界の秩序の変化,9.11,成熟した国と新興勢力,世界の経済状態,民間の宇宙活動・・・世の中のことを論じる能力は私にはありませんが,どこがそのターニングポイントだったか,宇宙の他の分野も同様か?それを「まがり角」と言ってよいのでしょうか?

 このような世の中の状況やその変化,と宇宙の仕事はもちろん無縁でないこと,過去の50年の単なる続きや延長では,これからはなんだか立ち行かないのであろう,とはどうやら明らかです.
曲がった先の風景はどんなモノか,誰もよく分かってません.
その先は行き止まりでないことを期待しますが果たしてどうでしょう.
次の50年がどういう50年になるのか?いや,ここは能動的に,どういう50年にするのかは,このまがり角をどう正しく曲がるかにかかっているのでしょうか.

 私にはどう曲がるかの処方箋を提示する能力もありませんし,経験も考えの及ぶ範囲も狭いので,せめてこれからのことを考える切り口につながる話がほんの少しでも出来るとしたらこれは幸いである,と言うくらいの気持ちで,やってみたいと思います.
今この連載で考えてみたらよい,と思っていますのは,ロケットのこれまでとこれからのこと,今後のミッションや宇宙の利用のこと,有人輸送や宇宙旅行のこと,さらにその先のことなど,楽しく元気よく宇宙の仕事が出来るにはどうする?
宇宙の仕事が世の中との関係で役に立っているとはどういうことか?などと言うようなことを切り口にするのかなと思っておりますが,さてどうなりますやら・・

 いずれにせよ,そんなことでロケットニュースの紙面をお借りして,このコラムを続けることをお許しいただければ有り難く思います.
・・と今回はご挨拶の続きと予告編で終わりにします.

(次回に続く)

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